在庫管理の考え方と、ソフトを活用した実践例
執筆者:カシオ計算機株式会社 三上哲章
「販売管理ソフトに在庫管理機能は付いているけれど、使いきれていない・・・」という中小企業様は多いのではないのでしょうか? ですが、本格的に在庫管理に取り組むと、仮に売上はそのままだったとしても、過剰在庫を抑制し、キャッシュフローを改善して利益アップに繋げることができます。
そこでこの記事では、私が20年、1,000社以上の中小企業のIT導入に携わるなかで実際に携わった事例や見聞した事例を元に、当サイトでご紹介している販売管理ソフト「EZ販売管理」による例示を交え、在庫管理の考え方や実践方法について解説します。
主要品目から少しずつ取り組めます
この記事で具体例として紹介するのは、ある機械工具卸の中小企業様です。品揃えの充実と短期即納体制で得意先に頼りにされる半面で、どうしてもキャッシュフローは圧迫され気味でした。そして、在庫管理には改善の余地がありました。
「うちの商品のすべての入出庫を把握するのは到底困難だ」というのが、在庫管理を取り組もうとしたときに最初に直面する、しかも最大の難関かもしれません。確かにいままでやっていなかった管理を、いきなり全部やれというのは大変です。
そこでそのお客様には、最近半年で売上数量の多い20~30品目に絞ってトライアルとして在庫管理に取り組んでいただき、効果を実感したうえで、業務に慣れてきたら他の品目にも管理対象を拡げていただくことにしました。
「ソフトを使って在庫管理を始めましょう」という提案を入り口にすると「全品目やらなくてはならない」と思い込む人が結構いるのですが、製造業で材料と仕掛と製品がよほど入り組む場合は別にして、管理対象を主要品目に絞って在庫管理に取り組むことができます。EZ販売管理では、商品ごとに在庫の管理をするかしないかを設定することができます。この点は他社様のソフトでも可能かと思われます。
適正在庫数(最低保有数)の算出
とっかかりとしての在庫管理対象品目を決めたら、次に各品目の適正在庫数を定めます。適正在庫の設定も、過去の売上動向が手がかりとなります。
EZ販売管理での例としては、標準で搭載しているBIツールを利用することで、過去半年間の商品毎の売上数量を把握することができます。CSVファイルの出力も可能なので、エクセルも併用して週単位での売上数量の平均値を割り出しました。
また、ABC分析でいうところの、BランクやCランクの商品にありがちですが、商品別得意先別に売上構成の詳細を確認していくと、商品によっては購入している得意先がほとんど決まっていたといったような事実を再確認できることがあります。社長はそのお客様の「顔」はすぐに思い浮かべることができました。そして、その商品はメーカーから比較的短納期で納入される商品だったので「あの得意先なら、3日は待ってくれるから、この商品は比較的短時間で直送対応も可能だし、そこまで自社で在庫をもっている必要はないな」といったような検討ができました。
このように、定量的な状況を確認しながら、取引先の顔を思い浮かべながら適正在庫数を考えました。確かに骨は折れる作業でしたが、これだけでも非常に有益な作業になりました。
仕入管理の運用変更
このような形で、各商品の在庫数量と適正在庫数量を設定したら、販売管理ソフトで取引を入力すれば、在庫の増減は自動計算されます。
この会社様の場合ネックとなったのは、受注や売上はほぼリアルタイムに入力処理されている一方で、発注管理は営業任せで、仕入管理については、仕入先からの請求書に対する検算や仕入帳の記帳を主な目的に、経理を担当されている方が週単位などでまとめて入力されていました。その運用のままでは、在庫管理に時間差が生じてしまいます。この点については、担当者にとっては負担にはなるものの、きちんと目的を伝えご理解をいただいて、仕入内容を毎日処理する運用に変更することができました。
販売管理ソフトで不足在庫・過剰在庫を確認
このようにして、まずは主要商品について、販売管理ソフトで日々在庫割れや過剰在庫を確認できるようになりました。以下、「EZ販売管理」の機能を例に具体的なイメージをご紹介します。
● サポートパネルによる「お知らせ機能」
「EZ販売管理」では受注や売上を入力する際、入力中の商品の現在の在庫状況を通知します。特にその受注や売上によって適正在庫数を下回る場合はアラートが発信されますので、欠品を防止することができます。
● 商品別過剰在庫一覧表
適正在庫数に対して、係数x以上(xには1.2や1.3倍といった任意の係数を入力できます)在庫が超過している商品をいつでも確認することができます。この会社様では営業担当者にこの表の確認を徹底することで、担当者間で別得意先を担当しているが、商品は同一の場合などに発生しがちな過剰発注を抑止することができました。
● BIツールによる適正在庫数の継続的な見直し
当たり前のことですが商品の需要は移り変わるため、商品毎の適正在庫数については販売状況を踏まえて定期的な見直しが大切です。
すでに本文中でご紹介しましたが、EZ販売管理に標準で搭載されているBIツールは、商品毎の売上数量の動向推移を視覚的に確認でき、また、その販売得意先の内訳などの詳細もすぐに把握できますので、適正在庫数の見直し検討に活用できます。
まとめ
最終的にこの会社様は、全品目に在庫管理を適用し、発注管理と仕入管理も接続運用されることで在庫管理が徹底され、キャッシュフローを大幅に改善することができました。また、日々の在庫管理の精度が高いため、業務負担になっていた棚卸し作業も、とても楽にすることができました。なお、この記事の中でご紹介した「EZ販売管理」をぜひ検討の一助としてご利用いただければ幸いです。