中小企業の経営者が知っておきたい販売管理ソフトの選び方
システム・ソフトウェア導入は目的ではなく手段である
執筆者:株式会社船井総研ITソリューションズ コンサルティング部
中小食品製造業をはじめとした、中小規模以下の企業において、販売管理ソフトを導入・活用されている企業は少ないようです。また、導入はしているけれど、上手く活用出来ていない企業も多く見受けられます。
見積、受注管理から始まり、売上管理や請求、売掛金の管理等、販売管理業務の大半は、表計算ソフトやワープロソフトといったオフィスソフトウェアで管理されている企業が多いようです。
しかしながら、オフィスソフトウェアでの管理には限界があり、過去の見積でお客様に提出した最終のものを探すのが困難だったり、お客様から受けた注文についても、履歴が追いにくかったり、さらには、注文管理が上手く出来てないために、お客様への請求書にミスが発生したりと、本来、業務効率化のためにソフトウェアを使用している筈が、かえって業務を繁雑にしているケースが多いのではないでしょうか。
販売管理業務を効率化は、専用の販売管理ソフトの導入により実現出来る可能性が高まりますが、ただソフトウェアを導入しただけでは解決には至りません。
販売管理ソフトの導入は手段であり、目的ではありませんので「販売管理業務の効率化」、「販売管理の徹底による経営指標の把握」等、まずは、目的をしっかりと見据えた上で、システム・ソフトウェアの導入に取り組む必要があります。
販売管理ソフト導入の前に実行すべき5つのステップ
販売管理ソフトの導入をスムーズに進め、しっかりと効果を上げるため、事前に以下の5つのステップを実行されることをオススメします。
① 業務の可視化
現状の販売管理業務の流れを可視化し、どこに問題があるか等、業務運用上の課題を明確にする。ここで業務の流れを図式化しておくと、課題が見つけ易くなると同時に、改善策も立て易くなる。
食品製造業等では、顧客、取引先等とやりとりをしている各種伝票についても、どのようなものがあるのかを洗い出しておく。
② システム・ソフトウェアでの運用への置き換え(フィット&ギャップ)
販売管理ソフト導入することで、前項①のステップで可視化した業務の流れの中のどこに、どのようなメリットをもたらすことができるのか、また、ソフトを利用することで、現状の業務の流れを変えること無く運用することができるのか、業務の流れの変更が必要な場合は、ソフトの機能に業務を合わせるのかを、机上で検討する。
③ トライアル(お試し)運用
近年は、クラウド型販売管理ソフトをはじめとして、購入前に無料でお試し利用出来るソフトが出ているため、それらを活用し、ソフトウェア購入前に、自社の販売管理業務にマッチするのか、期間を決めてトライアルを実施する。
④ 運用評価
前項③のステップで実施した販売管理ソフトを活用したトライアルによる効果や課題を洗い出し、評価する。
⑤ 標準化
前項④のステップで得られた評価に基づき、販売管理ソフトを使用した販売管理業務の流れや運用ルールを基本業務として標準化・マニュアル化する。
上記のような導入前の準備がしっかりと実施出来ているかどうかが販売管理ソフト導入成功のポイントとなります。
特に、現状業務の可視化(ステップ①)とシステム・ソフトウェアでの運用への置き換え(ステップ②)が重要です。この2つのステップを中途半端にしたまま販売管理ソフト導入を進めてしまうと、せっかくのソフトが使いにくかったり、本来使用したい機能が業務にマッチせず使えなかったりと、業務効率化ではなく、逆に非効率化してしまう結果を招きかねません。そうなると、業務にかかる手間が増え、残業時間が長くなったり、結果的に別のソフトウェアに入れ替える等、コストが増加することになってしまいます。
これから販売管理ソフトの導入・入れ替えを検討される経営者の皆様は、単純に評判や価格でソフトを選び、導入するのではなく、現状の販売業務を正しく認識し、販売管理ソフトを導入することで、どういった課題を解消したいのか、どんな目的を達成したいのかを明確にした上で、導入・入れ替えの検討に進んでいただければと考えております。