経営者が知っておきたい軽減税率への対応―「お客様予算」を意識した価格設定の重要性
執筆者:株式会社船井総合研究所 フードビジネス支援部 メーカー・フードビジネスグループ
消費税率の引き上げと軽減税率の実施が2019年10月1日からと、約1年後に迫ってきています。何が8%のままで何が10%へと上がるのか、また、消費動向はどうなるのか、企業はどのような対策をとればよいのか等、気になっている方も多いと思います。
今回は、酒造業を例に、軽減税率への対応について紹介します。
国税庁の資料によりますと、食料品や飲料は8%です。食品表示法に規定する食品は軽減税率の対象品目となります。しかし、「酒税法に規定する酒類を除きます」とありますので、酒類、要するにお酒は残念ながら軽減税率の対象にはなりません。酒類の定義は「アルコール分1度以上の飲料」のため、みりんも10%となります。甘酒やノンアルコール飲料はもちろん8%ですが、お酒は10%です。
その様な中で、酒造業はどのような対策をとればよいでしょうか。
結論を申し上げますと、
「お客様予算を意識しましょう」
です。
前回、2014年4月の増税時にはその前後に各種セールや「丁度よい機会」と値上げ、値下げが見られました。今回も様々な施策はみられることでしょう。そこでのお酒ですが、スーパーマーケットやカテゴリーキラーで販売される、数円の差が購入、非購入に影響する割安アイテムは多少の影響は受ける可能性はあります。
しかし、以下の様な商品が影響を受けることは小さいと予想されます。
- 非安売り業態で販売される720ml 1,000円以上の日本酒
- 酒蔵の直売店や観光地で販売される地酒
- 通信販売での酒蔵限定酒
価格差が購入時の要素のウェイトを占める割安アイテムではなく、目的買いの要素が強い日本酒、地酒は数円、数十円の差はマイナスには作用しにくいのです。ただし、気を付けるべきは「お客様予算」です。ここをハズしますと仮に“割引をしても売れない”という現象も起こります。
人間がモノを買う際、「これにはこのぐらいは出せる」という「お客様予算」が存在します。
ランチは1,000円、同僚との飲み会は3,000円、大切な方へのお中元・お歳暮は5,000円など、それぞれ頭に描かれると思います。
その際、ぴったり1,000円ではなく、おおよそ1,000円でも購入されますが、1,000円の場合、分岐点価格は下限800~上限1,800円です。統計的にその範囲内で購入される方が多いということです。したがって、720mlの税込価格1,080円の日本酒が1,100円になったとしても影響は少ないのです。税込価格800円未満が800円を超えると「お客様予算」も上がってしまうため売れなくなる可能性は高まります。
この度、「値上げをしてしまおう」という酒造業の声を耳にしますが、税込価格が、この「お客様予算」を逸脱しないようご注意ください。逆に、収まっている場合は恐れずに価値訴求をし目的買いへと誘導しましょう。
以上、軽減税率対策として販売価格を変更する際、見積書や請求書はもちろん、日々の売上管理への影響も出てくるため、販売管理ソフト等のITツールが対応しているかを確認しておく必要があります。また、未導入の場合は、予め軽減税率に対応したソフトを導入しておくことで、スムーズな軽減税率対応が可能になります。
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