ペーパーレス導入のメリット・デメリット、推進のポイントを解説
新型コロナウイルス感染防止対策として、テレワーク(リモートワーク)を導入する企業が増加したこともあり、ペーパーレス化も急速に進んでいます。また、2022年の電子帳簿保存法改正により、文書の電子化要件が緩和されたこともペーパーレス化を進める要因のひとつです。そこで今回は、これからの企業経営において重要なポイントとなるペーパーレスについて、その重要性や導入によるメリット・デメリット、推進していくためのポイントについてお伝えします。
ペーパーレスが求められる理由
ペーパーロジック株式会社が2021年12月27日に発表した、「ペーパーレス化に伴う2022年度予算に関する調査」を見ると、72.3%の企業が2021年にペーパーレス化を推進したと回答しています。同社は2021年1月にも同調査を行っており、このときは75.7%の企業が2020年にペーパーレス化を推進したと回答。すでに多くの企業でペーパーレス化が進んでいることが分かります。
70%以上の企業がペーパーレス化を推進しているのにはいくつかの理由が考えられますが、そのなかでも主なものとして挙げられるのは次の4点です。
- 感染症対策としてのテレワーク対応が必要になっている
新型コロナウイルスはもちろん、これからも未知のウイルスによる感染症の拡大が起きる可能性はゼロとは言えません。そうした意味で企業による感染症対策の実施は、継続的な経営を続けるうえで欠かせないもののひとつです。
テレワークは感染症対策として高い効果がありますが、テレワークにはいつどこにいてもオフィスと同様の働き方を実現させるペーパーレス化が欠かせません。
- SDGsへの取り組みを企業として行う必要が生じている
ペーパーレス化はさまざまな効果を生み出しますが、環境保護にも大きな効果を発揮します。紙を使わなくなることで、森林伐採の減少につながるため、SDGsへの取り組みとしてペーパーレス化を進める企業も少なくありません。
- 業務効率化
「会議を行う際の資料印刷やコピーにかかる手間」「請求書作成で、印刷や折りたたんでの封筒入れ、郵送の手間」「外出先から日報を提出するためだけに帰社する手間」など、ペーパーレス化によりさまざまな手間が削減可能です。多くの業種で慢性化しつつある人材不足による業務負担が大幅に減り、効率化が進みます。
- 電子帳簿保存法改正による文書電子化の要件緩和のため
ペーパーレス化を進めるうえで大きな課題となっていたのが、電子帳簿保存法です。もともとはペーパーレスを進めるための法律ですが、電子化のための要件が厳しく逆にペーパーレスが進まない要因ともなっていました。しかし、これまでに5回の改正を経て、2022年1月から始まる5回目の改正で電子化の要件が大幅に緩和。本格的にペーパーレス推進の土台が整ったことで、改めてペーパーレスが求められるようになっています。
電子帳簿保存法改正についての詳細は、「電子帳簿保存法とは? 対象書類や注意点、対応によるメリットを解説」をご覧ください。
ペーパーレスを導入するメリット・デメリット
ペーパーレスを推進する土台は整いましたが、ペーパーレスの導入で企業にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょう。
ペーパーレスを導入するメリット
- 多様な働き方の実現
ペーパーレスの導入は、テレワークの推進にも大きな効果があると説明しましたが、それ以外にも多様な働き方の実現に大きな効果を発揮します。例えば、紙資料が減ることでオフィス内での個人の荷物も減り、フリーアドレスも導入しやすくなるでしょう。そのほかに、自宅やサテライトオフィス以外にもコワーキングスペース、レンタルオフィスなどあらゆる場所で働けるようになり、フレキシブルオフィスの導入も可能になります。
- 経費削減効果
ペーパーレスの導入により、業務効率化が実現しやすくなりますが、同時に印刷代や封筒代、郵送代の削減にもつながります。同時に、紙書類を保存するファイルや書棚を購入する経費削減も可能です。また、テレワークに伴い、大きなオフィスを構える必要もなくなり、オフィスの省スペース化も実現します。
- 採用活動が有利になる
現在、テレワークを含めた多様な働き方は、求職者が企業を選択する要因のひとつです。2021年5月21日に、転職情報サービスの「en」が発表した、「転職者心理2021年度版」。このなかで、コロナ禍を経て企業選びの際に特に何を重視するように変わったかという質問で最も多かったのは、「希望の働き方(テレワーク・副業など)ができるか」です。
これまで説明してきたように、テレワークの導入にはペーパーレス化が不可欠のため、結果としてペーパーレスの導入が有利な採用活動にもつながることが分かります。
ペーパーレスを導入するデメリット
- 初期導入コストがかかる
ペーパーレスを導入するデメリットとして大きいもののひとつが初期コストです。電子帳簿保存法の改正で電子化の要件が緩和されたとはいえ、電子化を行う際には要件を満たせるパソコンやプリンター、スキャナーなどが必要になります。
- 電子化の必要ない文書・書類まで電子化してしまい、かえって非効率になる
ペーパーレスを導入するとしても、業務によっては紙のままの方が効率的なものもあるでしょう。そのため全ての帳簿や書類を電子化するとかえって非効率になります。また、すべての帳簿、書類のなかから電子化を行うものを選択し、電子化を実行する際にかかる人的・時間的なコストも無視できません。
- 最低限のITリテラシーがないと電子化された書類やワークフローを使いこなせない場合もある
電子化された書類はパソコンやスマートフォン、タブレットで閲覧、管理を行います。そのため、ITリテラシーの低い社員がいると、使いこなせずに必要な情報を共有できない場合もあります。
ペーパーレスを進めるためのポイント
ペーパーレス導入によるメリット・デメリットを踏まえ、どのように進めて行けばスムーズにペーパーレス化が実現するのか、そのポイントを説明します。
- ペーパーレス化を行う帳簿・書類の見極め、ルールの策定(体制づくりも含めて)
自社の業務内容や電子帳簿保存法を把握したうえで、電子化を行う帳簿・書類の見極めを行います。やみくもに電子化を進めても無駄が増えてしまうため、ペーパーレス推進のためのチームやルールを策定し、事前準備にしっかりと時間をかけることが重要です。
具体的なルールとしては、「電子化を行う書類、しない書類、廃棄する書類の線引き」「オフィス外から電子化した書類を閲覧する際の権限」などが挙げられます。
- システムの導入
ペーパーレスは導入時だけではなく、運用を開始した後にも適切な管理をしないと効率化というメリットは得られません。そこで、改正電子帳簿保存法に対応していることはもちろん、自社のペーパーレス化に合ったシステムの導入がおすすめです。
「楽一」であれば、販売管理、会計、給与、資金繰りなど基幹業務をトータルでサポートするシステムを提供しているため、業務内容によって最適なシステムを選択できます。
- 社員教育の徹底
いつどこにいてもオフィス内の書類にアクセスできるのは大きなメリットである半面、情報漏えいリスクが増大するデメリットにもなります。そこで、ITリテラシーの低い社員向けも含め、ペーパーレスの実施・運用に関する教育の徹底も重要です。
まとめ:ペーパーレスの推進はスモールスタートで進めるのがポイント
ペーパーレスは、電子化する文書・書類の見極めやルールの策定、実際の電子化作業など、最初の段階が最も手間やコストがかかります。そのため、最初はスモールスタートで成果を見ながら少しずつ進めていくとよいでしょう。
最初から全社で取り組むのは手間やコストがかかるうえ、必要のないものまで電子化を進めてしまい、非効率になってしまうケースも少なくありません。まず、一部の部署やチームでペーパーレス化を行い、そこでPDCAを回しながら、細かいルールを作っていけば、拡大していく際にも新たにルールを検討する無駄が生まれにくくなります。
また、効率的に進めて行く方法としておすすめなのが新たなシステムの導入です。「楽一」は、ハードウェア、ソフトウェア、サポートをトータルでご提供する販売管理システムです。これから納品書や請求書など、販売管理に関わる書類のペーパーレス化を検討される際は、ぜひお気軽にお声がけください。
参照サイト:
・【リサーチ】「ペーパーレス化に伴う2022年度予算」に関する調査|ペーパーロジック株式会社
・転職者心理 [2021年版]|en人事のミカタ
・コロナ禍で明らかになった、ペーパーレス化が必要なたった一つの理由|ZAC
・ペーパーレス化はなぜ必要?メリットや推進のポイント、成功事例を紹介|ワークフロー総研
・2022年の法改正でペーパーレス化に追い風!ペーパーレス化のメリットと導入手順とは?|働き方改革ラボ
・EZ給与勤怠|楽一|CASIO