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賃金台帳とは?給与明細との違いや記載項目、書き方などを解説

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賃金台帳とは簡単に言うと従業員への給与の支払い状況を管理する書類です。法定三帳簿のひとつであり、正しい対処ができていなければ、法に抵触する可能性があります。

ここでは、賃金台帳の概要や給与明細との違い、記載項目や書き方など、正しい対処をするために知っておきたい賃金台帳の基礎知識について解説します。

賃金台帳とは?

賃金台帳とは、従業員の給与支払い状況を示す項目について、記載すべき書類のことです。

このあとで紹介する「法定三帳簿」のひとつで、労働基準法第108条において作成が、第109条において保存が、企業に義務付けられています。事業所が複数ある場合は、事業所ごとに作成しなければなりません。

法定三帳簿とは?

「法定三帳簿」とは、労働基準法で作成・保存が義務付けられている、労務管理のための3つの帳簿のことです。賃金台帳以外に以下2つの帳簿が該当します。

  • 労働者名簿

労働基準法第107条において作成を義務付けられている、氏名や住所、雇入年月日、生年月日、従事する業務の種類など従業員の個人情報を管理するための書類です。

  • 出勤簿等

労働時間や休憩時間、休日など従業員の勤務時間を管理するための書類です。賃金台帳や労働者名簿のように労働基準法において明確な規定はなく、厚生労働省が平成29年1月20日に策定した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置 に関するガイドライン」の第4項「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置」において、記録すべき内容や原則的な記録の方法などが定められています。

給与支払明細書との違い

賃金台帳と似た書類に「給与支払明細書」があります。給与支払明細書と賃金台帳はどのように違うのでしょうか。

給与支払明細書は、従業員一人ひとりに交付するもので、その従業員の給与額や控除額などが記載された書類です。労働基準法ではなく、所得税法第231条で従業員への交付が義務付けられているものです。

一方、賃金台帳は前述のとおり作成・保存を義務付けられているもので、給与額や控除額以外に労働日数や労働時間などの記載も必要とされています。給与明細は労働日数や労働時間などの記載がないことが一般的で、賃金台帳の代用にならないことがほとんどです。

また、賃金台帳は労働基準監督署に提示を求められれば速やかに提示しなければなりませんので、誤りなく記載し、定められた期間内は必ず保存しておく必要があります。

そのため、仮に賃金台帳に記載すべき内容を網羅した給与明細を作成していたとしても、給与明細とは別に作成しておくことがトラブル回避にもなります。

なお、給与の仕訳についての詳細は「給与における仕訳とは?概要や仕訳方法、注意点について解説」をご覧ください。

賃金台帳の記載項目と書き方

従業員の給与支払い状況を示すために賃金台帳に記載すべき項目と、書き方を紹介します。

賃金台帳の記載項目

賃金台帳には次のような項目について記載します。

  1. 労働者氏名
  2. 性別
  3. 賃金の計算期間
  4. 労働日数
  5. 労働時間数
  6. 時間外労働時間数
  7. 深夜労働時間数
  8. 休日労働時間数
  9. 基本給や手当等の種類と額
  10. 控除項目と額

賃金台帳の書き方

上記の賃金台帳の記載項目のうち、分かりづらい項目や重要な項目について書き方を紹介します。各項目の前の番号は上記の「賃金台帳の記載項目」の番号に合わせています。

<3.賃金の計算期間>

賃金の計算期間とは、給与を支払う際に計算の対象となる期間のことを指します。例えば月末締めの場合は、「11月1日~11月31日」といったように記載します。

<4.労働日数・5.労働時間数>

既出の賃金の計算期間内の労働日数や労働時間数を記載します。これらの項目は従業員の労働時間・日数が適正なものかを判断する項目であり、労働基準監督官による調査の際には、労働基準法に違反しないかどうか重要視される項目となります。

なお、有給休暇を取得した場合は、通常どおりの労働日数として加算します。(有給休暇)のようにかっこ書きを入れたり、印を入れたりして、有給休暇だと分かりやすくしておくといいでしょう。

<6.時間外労働時間数・7.深夜労働時間数・8.休日労働時間数>

1日8時間週40時間の法定労働時間を超える時間外労働時間数や、深夜、休日などにかかる労働時間数を記載します。この場合の深夜とは午後10時から翌朝午前5時までの間を指します。

労働日数・労働時間数同様、労働基準法に違反しないか重要視される項目です。正しく記載しましょう。

<9.基本給や手当等の種類と額>

給与の総額を記載するのではなく、「基本給」「所定時間外割増賃金」など、内訳がひと目で分かるように記載しなければなりません。「扶養手当」「通勤手当」などの手当も分けて記載する必要があります。

なお、月給で支払う従業員には基本給で記載しますが、パートやアルバイトなど時間給で支払う場合には、時給×勤務時間で記載することになります。

<10.控除項目と額>

健康保険料や厚生年金保険料、雇用保険料といった社会保険料や、所得税や住民税といった税金など、給与から控除される項目とその金額を記載します。

給与計算についての詳細は「給与計算とは?計算方法や必要な準備など基本的なポイントを解説」をご覧ください。

賃金台帳への記入が必要な対象者

正社員、アルバイト、パート、非正規雇用者、日雇労働者など雇用の形態にかかわらず、すべての従業員が対象になります。

ただし、継続勤務1カ月を超えない日雇い労働者については、「3.賃金の計算期間」の記載は不要です。

また役員は従業員には含まれませんが、社会保険の加入対象者であれば、賃金台帳への記入の対象です。ただし、労働基準法上の「管理監督者(※1)」については「6.時間外労働時間数」「8.休日労働時間数」の記載は必要ありません。深夜労働については管理監督者でも手当が発生するため、「7.深夜労働時間数」の記載が必要です。

(※1)管理監督者とは、厚生労働省発行の資料によると、「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいい、労働基準法で定められた労働時間、休憩、休日の制限を受けない」者のことです。

賃金台帳の保存期間・書式

賃金台帳の保存期間は、労働基準法で原則5年間と定められています。ただし現在は法令改正の経過措置として、従業員の賃金を最後に記載した日から起算して3年間保存となっています。

賃金台帳に入れるべき内容が記載されていれば、書式は特に定められていません。厚生労働省のホームページにテンプレートが紹介されていますので、作成の際の参考にするといいかもしれません。

賃金台帳(常時使用される労働者に対するもの)
賃金台帳(日々雇い入れられる者に対するもの)

賃金台帳は必ずしも「紙」である必要はなく、例えばエクセルで作成してパソコンに保存しておくといったことも可能です。

ただし「画面上に表示し印字することができること」「労働基準監督官の臨検時等、直ちに必要事項が明らかにされ、提出し得るシステムとなっていること」「誤って消去されないこと」「長期にわたって保存できること」などの要件を満たしておく必要があります。

保存期間を守らないと罰則もある

保存期間を守らない場合は、保存期間を定めた労働基準法に抵触することになり、労働基準法第120条に基づいて30万円以下の罰金が科せられる恐れがあります。

実際は、よほどの悪意がない限りすぐに罰金は科せられず、まずは是正勧告書に従うことで問題なくすむケースが多いようです。しかし、是正勧告書に従わない場合には送検されて罰金を科せられる可能性も出てきます。

いずれにしろ、賃金台帳の作成・保存は法律で定められている義務ですので、正しく対処しておくようにしましょう。

賃金台帳が必要になるシーン

賃金台帳は、従業員を雇用したときや従業員が退職するときなど、雇用保険の手続きを行う際に必要になります。各種助成金の申請をする際に提出を求められることも少なくありません。

また、労働基準監督署による臨検監督(※2)が行われる際に提出を求められたり、是正勧告により改善したかどうかを確認するため再提出を求められたりする場合もあります。

(※2)臨検監督とは、労働基準法や労働安全衛生法などに違反していないかを確認するために、労働基準監督署が行う立ち入り検査のことです。

賃金台帳の作成・保存は正しく、そして忘れずに

賃金台帳の作成は法律によって定められています。そのため、記載すべき事項を漏れなく記入する必要があります。本記事の内容を参考に、法律で定められている基準を満たす賃金台帳を作成し、定められた期間内は必ず保存しましょう。

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