コラム
業務効率化や生産性向上など、中小企業のさまざまな課題解決に役立つ情報をお届けします。
  1. トップ
  2. コラム
  3. 新時代の就業規則

新時代の就業規則

イメージ画像

執筆者:ドリームサポート社会保険労務士法人 CEO 特定社会保険労務士 安中繁

どの会社にも、就業規則が備えられているでしょう。長引くコロナ禍にあって、これが急激に陳腐化していることを実感しています。企業が置かれている環境を踏まえ、事業の維持発展を下支えするための働く人を取り巻くルールを未来志向で作りかえていきませんか?

1.変化のキーワードは、「多様性」

長引くコロナ禍にあって、社会環境が大きく変化してきました。無論、コロナ前から押し寄せてきている不都合な事実が解消されたわけではありません。

  • 事実その1 日本は、人口減少社会に入っています
  • 事実その2 日本は、超高齢社会に突入しています
  • 事実その3 日本は、債務超過状態を拡大させています
  • 事実その4 日本は、経済成長をとめています

本コラムの本旨ではないので、これらを掘り下げて検討検証することはしませんが、このような状況を打破するために、国は政策的に、多様な人財の活用を「一億総活躍社会」「働き方改革」「新しい資本主義」などの看板を掲げて、法改正もしつつ推進しているところです。

個々の企業の現場でも、自社が多様な人財の活用ができる状況を作っていかないと、存続が危ぶまれる時代に入ってきています。

2.変わるものと変わらないもの

国が法改正により変化をキャッチアップして改革を牽引していこうとするのと同じように、企業は就業規則の改定を効果的に行って魅力的な企業であり続け、発展し続けていただきたい、これが社会保険労務士として企業サポートの現場に立っている私の心からの願いです。多様性というキーワードから、変えていくものと変えないものを検討してみます。

「人」の多様性

★変わるもの:従来は、健康な男性を主軸とした「正社員」により企業人事を組み立てていくというのが日本企業の定番でした。しかし、人口減少が今後も続くことを考えると、女性、シニア層、病気治療をしている方、障がい者、外国人等も、企業の基幹人財となれるような枠組みにしていくことが求められます。

その方針でいくと、正規非正規で大幅に処遇が異なる就業規則は、早晩トラブルの火種になるでしょう。現に、非正規社員に支払われるボーナスの額が低廉であることへの問い合わせが、社内に設けられている雇用相談窓口に寄せられるという例が非常に多くなっています。

★変わらないもの:「企業文化」は、変わらないもの・変えたくないものの筆頭株主でしょう。しかし、たとえば、外国人雇用が増えていくと、日本人間の暗黙の了解は、暗黙のままでは伝わりません。在宅勤務の頻度も高まると、文化を体感する機会も激減しますので、どのような振舞い・勤務態度が当社の「らしさ」なのかを、明文化することがますます必要になってきます。今も昔も変わらない大切なこと、我が社の文化。これを言葉にして就業規則でも語ることをしていきたいところです。

「契約形態」の多様性

★変わるもの:契約形態は、「正社員+パート」の二種類である、といった状況から、正社員だけれど短時間勤務、短日数勤務、というケースが珍しくなくなりました。家族介護や育児をしている人への法的福利厚生措置を定める育児・介護休業法の改正も後押ししているのでしょう。また、最近では、インターネットプラットフォームの進化により、雇用によらない働き方をする人(ギグワーカーや、プラットフォーマーなどと呼ばれるようです)が急増しています。これらの方は、基本的にはフリーランスの業務委託契約により役務の提供をする人と企業は位置づけているはずですが、「ともに働く仲間」だと大括りにしたときに、雇用契約をしている人との格差を縮める方に舵を切るのが自然の流れです。

そんななか、正社員だけに手厚い休暇、教育、慶弔見舞等が予定されている就業規則の定めには、違和感を禁じ得ません。たとえば、正社員でも短時間・短日数勤務できるという雇用枠組みを新たに創出した場合に、その正社員に「正社員」という雇用枠組みであることを理由に、従来正社員と同等の特別休暇日数を付与していいのですか?と経営者・人事労務担当者にお尋ねする機会が増えています。年次有給休暇の取得率も高まっているという状況を背景に、多すぎる特別休暇は適正化することも検討が必要です。

★変わらないもの:契約形態が変わっても、多様化しても、人を大切にするということに変わりはないと思います。むしろ、昨今の世界的な人権意識の高まりを受けて、強化されていく方向にあるといえるでしょう。変わらない大切なものを忘れないように経営の舵をきりたいですね。

「場所」の多様性

★変わるもの:コロナ禍の産物といえば、在宅勤務、モバイル勤務等、リモートワークの環境が劇的に整ったことにあるでしょう。緊急対応的に在宅勤務やむなしで実施してきた企業も多いと思いますが、これからを見据えて、本格的に働く場所に対する制限の解除・緩和を検討していき、有能な人財を確実に確保していきましょう。

★変わらないもの:場所が多様になったといっても、労働安全衛生法は変わっていません。実は、机上は300ルクス以上、室温は17-28℃・湿度は40-70%、机椅子は高さ調整傾き調整ができることなど、作業環境に関する基準が同法には設けられています。これらを担保できる環境が自宅にあるかどうかも含めて企業が関与していくことが働く人の健康を守るために設けられている安全配慮義務の一環となるのです。恒久的なリモートワークを社内でルール化するにあたっては、その点の審査を実施するというプロセスもルール化していきましょう。

図表:厚生労働省「自宅等でテレワークを行う際の作業環境の整備について」の図表を加工して作成
出典:厚生労働省「自宅等でテレワークを行う際の作業環境の整備について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_01603.html

楽一について詳しくはコチラ ご相談・お問い合わせはコチラ
ページトップへ