小規模企業の為の、長く使い続けられる販売管理システムの選び方【⑤これだけは外せない!小規模企業に求められる販売管理要件10か条の7と8】
執筆者:ITコーディネータ (認定番号 0094392010C)
武内 靖志
前回は、【これだけは外せない!小規模企業に求められる販売管理要件10か条】のその5とその6について、自社のITリテラシー(IT機器やシステムを使いこなす力)に見合ったシステムを選ぶ必要性と、今行っている販売系の事務作業について、できるだけ全てシステム化すべきである理由についてお話させて頂きました
今回は、
7. 経営者の何故?に答えられるシステム
8. 過去のデータ検索が自由にかつ有効に活用できるシステム
という点について、その必要性と使い方なども含めてお話させて頂きます。
第一話 小規模企業の為の、長く使い続けられる販売管理システムの選び方⑤
目次
Chapter 1|10か条 7.経営者の何故?に答えられるシステムってどんなシステム?
「最近売上が落ちてるなあ~」
「やっぱりコロナが影響しているのかな~」
「物価高が続いて景気が悪いからな~」
こういう経営者の声をよく耳にするようになりました。
この嘆き(ぼやきともいう)には共通したポイントがあります。
“自分たちではどうしようもない事”に原因を求めている事です。
私たち個人の力では、コロナ問題もウクライナ情勢も、原油高も、景気対策もどうしようもありません。
個人の力ではどうすることもできない事に売上減少の原因を求めた場合、その先に打つ手はなくなります。
何か対策を検討する余地をなくしてしまいます。
何もせず、ひたすらどうしようもない逆風が去るのを待つようになります。
時間の経過が解決してくれることをひたすら祈り、神頼みしているだけです。
いわゆる“雨乞い”状態です。
これでは何も解決しません。一歩も前には進めません。
どんな時代でも、どんなに逆風が吹いている景気の中でも、きちんと売上を伸ばしたり、経営を維持したりしている小規模企業はたくさんあります。
心形刀流・松浦静山の『常静子剣談』の中に、
「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という言葉があります。勝因は色々あってよくわからない事が多いが、敗因は必ず自分自身の中にある。 敗因を充分に分析・検討することが大切だと説いています。
売上が低迷している時、そこには必ず自分たち側の問題点が何かあるはずなのです。どうしようもできない他律要因を挙げる前に、まずは自分たちの事業のどこに問題があるのかを炙り出すことが大切なのです。
そんな表向き見えない問題にヒントを与えてくれる販売管理システムがあります。
経営者の何故?に答えてくれるシステムです。
●最近売上が落ちてきたな~
●いったい、どこの得意先の売上が落ちているんだろう?
●売上の落ちている得意先は毎月落ちているのか、特定月だけ落ちているのかなあ?
●落ちている得意先はどの商品の売上が減っているのだろう?
●それぞれいくらくらいダウンしているのだろうか?
●その商品は他の得意先でも売上ダウンしているのだろうか?
こういった経営者の何故?が解決すれば打つ手が見えてきます。
例えば、全社売上が対前年比10%ダウンしているうち、減少した分の80%以上は得意先Aが要因であったと判明したとします。
得意先Aの対前年月別売上を比較すると、全体的にダウンしている傾向にあるが、特に最繁忙期の12月の売上が40%もダウンしている事が判明しました。
では、どの商品がダウンしているのか?というと、酒類はそこそこ伸びているのに、米や麦・餅などの主食部門が大幅にダウンしている事が分かりました。その主食のうち、全体的に大幅ダウンしていますが、特にパック餅はほぼゼロになっていました。
こういった事実は販売管理システムと対話することで答えが出てきます。
このようなデータが明らかになってきて、ここからが経営者(人間)の出番です。
早速、得意先Aに出向き、実態を調査します。
餅や雑穀米はじめ主食商品は同業者のXからここ半年、納入されている事が分かりました。
先方の購買担当者と話をしたところ、価格が同業者Xの方が5%安く納入されており、価格面もさることながら、納入体制に問題があると指摘されました。同業者Xは小口で毎日最低必要数量を配達してくれるが、お宅は週2回の納入で価格も高いという事で担当者に改善を要求したが、その後何の連絡もないとの事で同業者Xに乗り換えたとの事でした。得意先Aの売上はコロナの影響でむしろ在宅が増えて上昇傾向にあるとの事でした。
この実態調査により、売上ダウンの要因はコロナや景気の問題は全く関係なく、むしろコロナで需要はアップしており、完全に自社の要因であるという事が分かりました。
こういった経営者の何故?に答えてくれる機能がBI(ビジネス・インテリジェンス)ツールです。
最近ではこのBIツールを標準装備したり、オプションで設定している販売管理システムも多くありますので検討する際には是非ご確認ください。
BIツールとは、企業内にある様々なデータを基に分析・可視化して、日常業務や経営戦略立案に役立てるソフトウェア・ツールの事です。
その主たる特徴は、過去の大量のデータを分類・集計・可視化・グラフ表示などを可能にし、どんどんとドリルダウンといって、データのレベルを掘り下げて表示する機能がある事です。
売上がダウン?⇒落ちているのはどこ?⇒いつの売上がダウン?⇒何の売上がダウン?とドンドンと掘り下げていって経営者の何故?に答えてくれるのです。
これは、売上ダウンの要因分析だけではなく、売上ダウンで苦しんでいる中で健闘している得意先や商品を見つけ出すことも可能です。アップしている要因にも何か秘密があるはずです。それを発見してその要因を他の得意先や商品に適用するなどを行って、自社の経営戦略構築にお役立て下さい。
BIツールは現時点の会社の強みと弱みは何かを見つけるヒントを与えてくれます。BIツールを搭載した販売管理システムと対話すれば見えなかったものが見えてくるのです。
このように、販売管理システムを選定する際には、せっかく蓄積された過去データですから、このBIツールを活用して、売上ダウンの要因究明や売上アップのヒントを見つけ出してください。
以前、“小規模企業の為の、長く使い続けられる販売管理システムの選び方①のChapter1過去データの重要性”で、販売管理システムを他のメーカーのシステムに入れ替える時に、過去の入力データは貴重ですとお話しました。その大切な理由がここにあるのです。あまりパッとしなかった販売管理システムであっても、入力したデータは貴重なデータであり、経営戦略のヒントになると申し上げましたが、このBIツールを使って過去何年も前の実績と現在の実績と時系列的に比較対象分析を行えば、重要なポイントが見えてくることもあるのです。
Chapter 2|10か条 8.過去のデータ検索が自由にかつ有効に活用できるシステムである事
コンピュータシステムの得意技は、
①膨大なデータから指定する分類や項目で集計し、それを帳票にしたりグラフ化する事
②指定した検索キーに基づいて、該当データを瞬時に見つけ出し表示する事
の2つがあります。
①については先ほどBIツールを例にとってご説明したとおりです。
もう一つの機能である②についてお話します。
従来の販売管理システムでは、あらかじめ設定されていた検索キーによる検索しかできませんでした。
例えば、伝票番号や得意先コード、商品コードなどどちらかと言えば数値タイプのデータのみ検索キーとして用いられてきました。
下図の①伝票番号②得意先コードなどです。
しかし、現実的には伝票番号や得意先コード、商品コードが分かるくらいなら苦労しません。
調べたい書類の伝票番号がわからないから困るのだと思います。
最近では、あいまい検索など、どの項目に入力したか覚えていないが、確かに入力したはずだという時にも検索できるシステムが増えてきました。
下図の場合、③の注番ですが備考に入れたのか摘要に入れたのかわからないがどこかに入れたはずだというケースや、④のように通常の品名のトレー(楕円)に付け加えて特注16×40とサイズを手入力したが多くのデータの中から16×40という文字が入力されているデータを引っ張り出したい!
そういう時にも瞬時に検索できる機能をもつシステムも出てきました
出来れば入力した全項目で、色々な条件で検索できる機能があれば有効活用できると思います。
例えば指定した商品の数量が100個以上200個未満の納品書だけ全て表示させるなど、実際に皆さんが「あれば良いな~」と考える検索方法をベンダーの方に聞いて、デモンストレーションで確認してください。
Chapter 3|小規模企業の為の長く使い続けられる販売管理システムの選び方⑤のまとめ
- “自分たちではどうしようもない事”に原因を求めていては、何も解決しない
- 「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」の原則通り、不調の原因は自社内に必ず存在する
- 経営者の何故?に答えてくれる機能がBI(ビジネス・インテリジェンス)ツールである
- BIツールは現時点の会社の強みと弱みは何かを見つけるヒントを与えてくれる
- 入力した全項目で、色々な条件で検索できる機能があれば有効活用できる
いかがでしょうか?
今回は、【これだけは外せない!小規模企業に求められる販売管理要件10か条】のその7とその8について、経営者の何故?に答えられるシステムはどういうシステムか? 現在の販売管理システムでは、過去のデータ検索がどの程度、自由にかつ有効に活用できるのかについてお話させて頂きました。
次回は【これだけは外せない!小規模企業に求められる販売管理要件10か条】の、
9. メーカーとベンダーの連携がきちんとできていて、フォローが良いシステムである事
10. 補足:自社の業態特有の処理ができるだけ簡単に処理できる事
という点についてお話させて頂きます。
どうぞご期待ください。