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外国人の雇用管理がうまくいくコミュニケーション術とは

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執筆者:ドリームサポート社会保険労務士法人
特定社会保険労務士 大野ゆかり

令和2年10月末現在の『「外国人雇用状況」の届出状況(厚生労働省)』によると、外国人労働者数は1,724,328人、日本で働く外国人労働者の数は過去最高を更新しています。 平成31年4月に新設された在留資格により今後も更に増加が見込まれ、日本の労働力強化に一役買ってくれる外国人労働者ですが、彼らが日本で働くことを、いかに双方にとっていかにメリットにしていくか、雇用管理の注意点からみていきたいと思います。

厚生労働省 令和2年度「外国人雇用状況」の届出状況

1)外国人雇用が増えている背景には国の後押しが

現在の日本は少子高齢化が進み、多くの業界で深刻な人手不足となっています。在留資格が新設されたことからも窺えるように(「特定技能」の在留資格として新たに14業種において外国人労働者の就労が認められるようになりました)、この問題を解決すべく、政府も積極的に外国人労働者の受け入れを後押ししています。

2)外国人を雇用するメリット

外国人を雇用するメリットにはどんなことがあるでしょう。
一つには人材不足の解消があります。また、グローバル化への対応といった点もメリットといえるでしょう。日本で働きたいという外国人労働者には、知識や技術を吸収しようとする意欲的な人材も多く、企業にとっては優秀な労働力となる可能性が高いです。さらに、外国人と一緒に働くことで、価値観が多様化され新しい発想が生まれるなど、職場の活性化も期待されます。

3)外国人雇用の注意点

外国人労働者を雇用するにあたってはメリットもありますが、注意点もあります。

就労資格の確認は十分に

まず、第一に、就労ビザや在留資格、就労可能期間の確認といった点に注意しなければなりません。在留資格のない外国人を働かせることはできませんし、万が一不法滞在となれば、本人が罰則や強制送還を受けるのみならず雇用した側も罪に問われます。企業側が認知していなかったとしても逃れることはできませんので、正しい知識を持つことが重要です。外国人を雇用する際には必ず在留カードを確認しましょう。

サポートと理解で良好なコミュニケーションを

言葉や文化の違いについても大きな注意点です。そもそも日本語力をサポートする必要がある場合もありますが、日本人同士であれば言葉にしなくても伝わるものも、外国人にはきちんと説明しなければ伝わらないといったことは多くあります。また、日本では常識とされているものが、他の国では非常識になるといった文化の違いもあります。
言葉や文化の違いにより、トラブルになることがありますので、日本に不慣れな外国人にはメンターを付けるなどサポート体制を取るといいでしょう。
また、外国人労働者に日本文化を理解してもらうだけでなく、日本人労働者にも外国人との文化の違いを理解してもらう必要があります。業務だけでなく業務外でコミュニケーションが取れる環境を作ることも一案です。

4)外国人も日本人も労働契約は同じ

外国人からの相談は賃金不払い、退職が多数

『「令和2年東京都の労働相談の状況」(東京都産業労働局)』によると、外国人労働者からの相談は、労働条件では「賃金不払い」や「退職」が大きな割合を占めています。
外国人労働者が労働条件を理解していなかったことも理由の一つとして考えられますが、
企業側がきちんと説明をしていなかったことも一因にあります。日本人であっても外国人であっても、労働契約について違いはありませんので、企業側は関係諸法令を十分理解するとともに、外国人労働者が理解できるように説明することが重要です。

東京都産業労働局の『令和2年東京都の労働相談の状況』

賃金制度についてしっかり理解してもらう

日本人には馴染みのある手当や控除でも、外国人にとっては手当の意味が分からない、給与から税金等が控除される理由が分からないといったこともあります。また、残業の考え方も各国で異なります。賃金は労働条件の中でも重要なポイントですので、外国人雇用の際にはより丁寧な説明が必要です。なお、外国人であっても労働基準法は適用されますので、最低賃金や給与の支払い方などについて差別することはできません。

外国人労働者も社会保険や雇用保険に加入する

外国人労働者の中には、保険料が掛け捨てになると思っているなどの理由から社会保険に加入したがらない人もいます。
日本国内の企業で働く場合には、日本人同様一定の条件に当てはまる場合、外国人であっても原則、社会保険に加入しなければなりません。法的な義務であることや加入のメリット、また、母国に戻ることになった場合、脱退一時金といった保険料が一部もどる制度があることを伝えて、理解をしてもらうといいでしょう。
ただし、母国に社会保障制度があり、日本と社会保障協定を結んでいる協定国であれば、両国で加入という二重加入にならないよう、母国か日本のどちらかの社会保障制度に加入していればよいことになっています。雇用する外国人労働者の出身国と社会保障協定が結ばれているか確認しておきましょう。

雇用保険や労災保険についても同様に外国人労働者という理由で加入しないということはできません。どちらも、日本人同様のルールに則って加入する必要があります。加えて、外国人労働者の場合、雇用時及び離職時に「外国人雇用状況の届出」をハローワークに提出する必要があります。雇用保険に加入する場合には、資格取得や資格喪失の届出の際に一緒に行えますが、雇用保険に加入しない労働者の場合には別途必要となりますので、忘れずに届け出ましょう。

保険料の徴収は給与に関係してくるものです。理解を得られないと会社への不信にもつながりかねませんので、入社前にしっかりとコミュニケーションを取っておく必要があります。

労働条件の明示はしっかりと

外国人に限らず人を雇用する際には、労働条件を明示する必要があります(労働基準法第15条)。しかしながら、労働条件や就業規則の説明がしっかりなされていない、特に解雇に関するルールがしっかりと示されていないため、トラブルになる企業も多くあります。
どういった場合に解雇になるのか、解雇事由をきちんと明示しておくことはもちろんですが、何より外国人が理解できるように説明することが重要です。
厚生労働省からは、やさしい日本語で作成された就業規則のひな型や外国語で作成された労働条件通知書のひな型も用意されていますので、そういったひな型を利用するとともに、齟齬が起きないように、根拠となる就業規則をしっかりと整備しておきましょう。

5)まとめ

労働基準法第3条で「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない」と定めているとおり、外国人であっても日本人であっても労働契約に違いはありません。
多くの外国人労働者は仕事のやりがいを求めて来日しています。外国人雇用は少子高齢化の進む日本において、大きな労働力となるだけでなく、グローバルで柔軟な考え方をもたらしてくれる可能性となり得ます。彼らが働きやすい環境を整えることは結果として私たち日本人の幸福にもつながってきます。
外国人労働者も企業の大事な一員としてその能力を最大限発揮できるように工夫していきたいですね。

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