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小規模企業の為の、長く使い続けられる販売管理システムの選び方【⑥これだけは外せない!小規模企業に求められる販売管理要件10か条の9と10】

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執筆者:ITコーディネータ (認定番号 0094392010C)
武内 靖志

前回、第一話 小規模企業の為の、長く使い続けられる販売管理システムの選び方⑤の【これだけは外せない!小規模企業に求められる販売管理要件10か条】のその7とその8について、経 営者の何故?に答えられるシステムとはどういうものか? 過去のデータ検索が自由にかつ有効に活用できるシステムの活用例などについてお話させて頂きました。
今回は、最終回として
9. メーカーとベンダーの連携がきちんとできていて、フォローが良いシステムである事
10. 補足:自社の業態特有の処理ができるだけ簡単に処理できる事
という点について、お話させて頂きます。


第一話 小規模企業の為の、長く使い続けられる販売管理システムの選び方⑥

Chapter 1|10か条 9.メーカーとベンダーの連携がきちんとできていて、フォローが良いシステムである事

“小規模企業の為の、長く使い続けられる販売管理システムの選び方④の10か条その5”でも述べさせて頂きました が、自社のITリテラシーに合ったシステムを選ぶ必要があります。販売管理システムのようなITツールはDX化を実現する為の道具にすぎません。道具は使えてこそ道具といえます。使える道具である条件は2つあります。

①自社のITリテラシーに合った小規模企業に求められる要素を満たしたシステムである事
②メーカーとディーラーが一体となって、使い続けている間、きちんとフォローし続けてくれること

この章では②のフォローについてお話しします。
フォローが良い、サポートが良いというと、
導入時にきちんと使い方を教えてくれる
分からない事には電話で操作を教えてくれる
予期せぬトラブルにはきちんと対応してくれて復旧まで手伝ってくれる
といった事を想像しがちですが、これらはインストラクション費用、保守サポート費用を支払っている以上、当たり前のことです。まあ、この当たり前のことを、当たり前にできていないところが未だにあるのは大変に残念な事です。
これらは当たり前のこととして、もっと大切な事は、今後起こると予想される軽減税率制度の改定、インボイス制度の変更、電子帳簿保存法対応などの国や協会、団体等が行う制度変更概要を事前に知らせてくれて、自社がどう対応すべきかきちんとアドバイスしてくれることが大切です。
以前のように大きな制度改正がない時代にはそれほど求められませんでしたが、現代のように頻繁に制度改正や税制改正がある場合、制度概要を事前に察知し、経済産業省や中小企業庁と深いパイプを持っていていち早く正しい情報を入手し、自社はどうすべきか?いつからどう対応すべきかなどの対応スケジュールをできるだけ早く知らせてくれることが大切になってきます。
税率改正や軽減税率品目の改定など、今後とも頻繁に制度が変わっていく可能性があります。そういった時にはできるだけ早くその制度概要を把握して情報伝達した上でアドバイスしてくれるのが本当のフォローが良いという事につながると思います。
そういう場合、システムメーカーだけの力、システムディーラーだけの力では行き届いたフォローはできません。
メーカーは制度概要の把握とパッケージシステムの基本部分の改修を行うと共に、それらとその対応スケジュールをシステムディーラーに指導・教育していく事が求められます。
またシステムディーラーはメーカーから提供された制度変更概要情報と改修プログラムをベースに、皆様方小規模企業の顧客へしっかり説明すると共に、入念に打ち合わせを行いながら対応スケジュールを固めていく事が求められます。
そういった際、メーカーとディーラーががっちりと連携してきっちりと役割分担が出来ている事が求められます。
その為には下記のような仕組みを保有している事が求められると思います。
また下記のような仕組みは日常的な運用時にも大きな安心感を与えてくれます。


パッケージシステム+アドオンカスタマイズを前提にしたシステムの場合、上記のようなフォロー体制が求められます。
1は要するにベースシステムの変更プログラムをオンラインで自動配信するサービスです。
例えば、法改正やシステムの不具合があった場合のシステム対応が必要な時に使われます。
スマホでもバージョンアップやアップデートが頻繁に行われますが、同じようにベースシステムに変更が必要な時にこのシステムが使われます。スマホのようにどのユーザーも同じプログラム使用の場合、メーカーの提供するバージョンアップ対応だけで完結しますが、販売管理システムのようなパッケージシステム+アドオンカスタマイズを前提としたシステムの場合、ベースシステムの上にその小規模企業に合わせたカスタマイズを施していますから、ベースシステムの入れ替えだけでは不十分です。変更されたベースシステムに合わせたアドオンカスタマイズシステムの部分もその変更に合わせた設定変更が必要になります。
すなわち、メーカーはベースシステム改修を担当し、アドオンカスタマイズ部分はディーラーが改修対応を担当することになるのです。ですからメーカーとディーラーのきちんとした連携が、制度変更時のスムースなプログラム対応につながると思われます。
2は例えば夜中などのシステムを使わない時間帯に、販売管理システムの大切な入力データをバックアップ保存する仕組です。以前はPCのデバイス(USBメモリやDVDメディアなど)にバックアップをコピーして保存していましたが、その場合、PCなどのハード故障時には対応できますが、火災や地震、津波、水害などで建物自体が被害を受けて、そのデバイスを建物内に保管していた時にはハードウェアと共に会社の財産を保存した貴重なデータも消失してしまいます。
そこで、今ではデータバックアップはメーカーが運営しているデータセンターに自動的にオンライン回線を通じてバックアップ保存するようになりました。
私の関与していた小規模企業も、以前隣家からの出火に伴い建物は全焼し、PCもバックアップを取っていたデバイスも消失してしまいました。しかし、クラウド上にオンラインバックアップが自動的に取られていたために、新品のハードウェアを準備したところ、すぐに復旧でき火災前の状態から続きで操作できるようになり感動されたことがあります。何が起こるかわからないこのご時世ですので、こういった仕組みを運用するメーカーを選択する事は必須ではないかと思います。
3についてですが、操作が分からない場合やトラブルが発生した場合、メーカーやディーラーのサポートセンターに連絡すると思いますが、現状を電話で説明しサポートセンターの人に正しく伝えるのはなかなか時間もかかり苦労するものです。
そんな時、このリモートメンテナンスサービスがあれば格段に生産性は向上します。
仕組は、ある操作をユーザー側とサポートセンター側ですると画面を共有できます。ユーザーの画面そのものを遠隔にいるサポートセンターの人が見る事が出来、同時にメンテナンス操作もできるようになります。
以前であれば、ユーザーが電話で現状を説明し、サポートセンター側がそれを数々の質問をして理解して、そして復旧のアドバイスを行い、ユーザーが理解してその通り操作して結果を報告する、この動作を繰り返すのですが、リモートメンテナンス機能があれば、サポートセンターの人が即座に現状を理解して難しい復旧であれば、復旧操作を代行できるというものです。これはどうしても組み入れて欲しいサポートサービスです。
4は1~3があっても解決できない場合、システムディーラーが出向して復旧やメンテナンスに取り組むというもので最後は人の手に頼らざるを得ないという場合のサービスです。
できるだけ早く来てもらって対応して復旧してもらう事が必要となります。
これらを見ても、顧客サポートはメーカーが主体となって作るサポート全体の仕組とディーラーの顧客満足度向上の精神を持ったフォロー体制の合作が、小規模企業で真に使いこなせる販売管理システムの必要条件といえるのではないでしょうか?
販売管理システムは他の会計システムや給与システムと違って、取引先との接点が多いシステムです。
その販売管理システムが何らかの原因でストップしてしまうと、取引先に迷惑をかけてしまう事が想定され、一刻も早く復旧しなければなりません。そうった意味でも、このようなメーカーとベンダーの連携がきちんとできていて、フォローが良いシステムというのは、皆様方の取引先を大切にして顧客満足度向上を図るという視点からも必須であると思います。

Chapter 2|10か条 10.補足:自社の業態特有の処理ができるだけ簡単に処理できる事

【これだけは外せない!小規模企業に求められる販売管理要件10か条】の最後は、補足:自社の業態特有の処理ができるだけ簡単に処理できる事です。
この要件にあえて補足という文字を付け足したのは、自社の業態や業種特有の処理ができるという事を最優先に考えて、それ以外のこれまで上げた1~9よりも優先度を高くして欲しくないからです。
小規模企業の方々の業種は様々です。食品製造業、日用雑貨卸、金属加工業、部品製造業、包装資材卸、文具小売業、木材建材卸、食肉加工業、青果卸……業種は千差万別です。
そして現在は食品製造業向け販売管理パッケージや日用雑貨卸ERPシステムや木材建材業向けシステムなど業種に特化した販売管理システムが数多くあります。
そして内容を見る限りその業種で発生する課題解決を実現できる仕様になっているように見えます。例えば、食品製造業システムでは、賞味期限管理とかHACCP(ハサップ)対応などです。
他の業種の方から見れば何のことかわからないと思いますし、本題から逸れてしまいますので詳細を述べる事は避けさせて頂きますが、問題はその機能がどの程度、その小規模企業の業務負担となっているか?です。
〇〇業専用販売管理システムと銘打って、内容を見れば自分たちの業種の特性をよく掴んでいるような仕様になっている。これはうちに合ったシステムだ!と他のPOINTを精査せずに選択するのは危険な気がします。
理由は、例えば賞味期限管理が今の皆様方の業務の中でどれほど大変な作業になっているか?
HACCPを実現する為にどれほど手間暇がかかっているか?という事です。
今、早く解決しなければならない課題は何か?という観点からそれを解決する事を最優先で考えて販売管理システムを選択して頂きたいのです。賞味期限管理やHACCP管理を最優先して欲しくないのです。
〇〇業専用システムを使わなくても自社の課題を解決できることもあります。賞味期限管理はそれ専用のシステムではなくても別の方法で最低限の管理ができるかもしれません。〇〇業専用システムという名前と賞味期限管理というシステムタイトルに惑わされて、本来の解決すべき課題解決から逸脱しないようにして頂きたいのです。
このことは、“小規模企業の為の、長く使い続けられる販売管理システムの選び方④の10か条その6  今、行っている販売系の事務作業について、できるだけ全てシステム化できる事”と一見矛盾したことを言っているように思われるかもしれません。
しかし私の本意は、できるだけ全てシステム化はして頂きたいが、それを管理する手間暇は必要最小限にして欲しいし、システム化の重要度をきちんとランク付けして、優先順位をつけてシステム化レベルを検討して欲しいという事です。
HACCPは今の自社のその業務に係る事務量と重要度で、専用システムを使って管理すべき事か、もしくは何らかの代用で対処した方が良いのかを、きちんとシステム化するメリットと手間暇を比較して頂きたいと思います。
     
個別の業種の話になって恐縮ですが、日用雑貨専用システムや木材建材専用システムの一つの機能として受注発注同時入力という機能があります。
これは、以前はこの業種は、商品を仕入れて在庫を持ち、得意先からの注文に合わせて、自社の在庫から出荷する。以前はそういう運用を行っているケースが多かったように思います。
その当時のこの業種は、自社の強みはどんな商品でも何でもあるという品揃えの豊富さを誇っていた事でした。しかし今は、商品点数も莫大になり、多品種少量の販売が主体になりつつあります。そんな中では、売れるかどうか不確定な商品を在庫で長期間持つことがリスクになってきました。そこで、これまで豊富な在庫を強みにしていた会社も、デッドストック化した商品を抱えてしまう事が逆に弱みになってしまう世の中に変わっていきました。
そういう時代には、売れ筋商品だけ自社で在庫として保有し、在庫にない商品は取り寄せ商品として受注の都度、最低限必要な数量だけ仕入先に発注するケースが増えてきたのです。
中には、在庫にない商品は仕入先に必要な数量だけ発注して直送してもらう形態をとるところも多いようです。
物流の発達により、即日発送が可能となってきたことも、こういった処理を可能にした要因の一つです。
そういう時代には通常の受注⇒発注⇒仕入⇒売上の流れに沿って一つずつ処理していくのではなく、受注発注同時処理や売上仕入同時処理が可能なシステムが求められるようになりました。
受注入力時に在庫のない商品を同時に同じ画面上で発注できる機能で、一回の入力で受注と発注、売上と仕入が同時に処理できるのです。
それらのシステムを統合して、上記のように日用雑貨専用システムや木材建材システムの機能としてアピールしています。(もちろん該当システムにはそれ以外にも業種に特化した機能はたくさんあります)。
しかし、これまで多くの在庫を保有して強みとしてきたのが、時代の変遷とともに取り寄せ処理が必要になってきた業種は他にもたくさんあります。金物小売業や文具小売業もこれらに該当します。
それで、通常の販売管理システムにもこういった受注発注同時入力や売上仕入同時入力の機能が標準装備されたりオプション機能として装備されています。
すなわち、〇〇業専用システムでなくてもそれに類した機能はいくらでもあるのです。
私のような、コンサルタント的な仕事に携わる者たちの間でも意見が分かれる事として、

●業種システムか
●業務システムか

どちらが企業にとって有益な選択か?といった問題があります。
業種システムというのは、先ほど以来お話している〇〇業専用システムという業種の特長を組み込んだシステムです。その特定業種で必要を思われる機能を特化して凝縮した専用システムといえます。
それに対して、業務システムとは、色々な会社で考えられる業務に重点的に視点をおいて、通常の販売管理システムに機能をアドオンしたシステムです。
例えばどの業種という事ではなく、納品書を発行したら運送会社の送り状や払込用紙を連動して発行する機能とか、文具業やスポーツ用品店などの学校や官公庁との取引がある会社で必要となる請求明細単位での入金の消込機能とか、食料品や雑貨店などの少量多品種を扱う会社で必要とされる仕入入力時に仕入先別の商品別の前回仕入単価を表示させて、仕入先が納入単価を間違って記載しているかチェックする機能など……
業種システムも業務システムもどちらも長所があり短所もありどちらが良いとは一概に言えません。
しかし批判を覚悟でお話すると、私の持論では、会社の規模によって有益なシステムは変わるという考えです。
業務量がそれほど多くない小規模企業期に選択すべきは業務システムで、中企業以上の規模になると業種システムが有効に機能するという考えを持っています。
小規模企業においては、失礼ながらそれほどの事務量がありません。そこに業種専用システムを適用すると、メリットよりもそれを運用する手間と時間がかかります。賞味期限管理を適用する為に、それに関しての入力する手間や確認して印刷したりする負担が増えます。それをシステム化することで逆に他の大切な仕事が疎かになってしまっては元も子もありません。
会社の規模が大きくなって、管理すべき対象件数が増えた段階で、そういった業種専用のユニークな業務のシステム化を検討すればよろしいかと思います。
それまでは自社の業務を効率化し、貴重な会社の財産である過去の入力データの有効活用方法を入念に検討していく事に専念した方が生産性向上などのメリットは大きく、会社の事業のスムースな運営に寄与するのではないかと思っています。
この辺りは、是非とも色々な方のご意見を参考にして、最適な販売管理システムの選択を行って下さい。

Chapter 3|小規模企業の為の長く使い続けられる販売管理システムの選び方⑥のまとめ

  1. フォローの良いシステムとは、制度変更などに素早く対応して事前に情報提供してくれるシステムである
  2. それを実現するのは、メーカーとディーラーががっちりと連携している事が必須である
  3. オンラインをフルに活用した、システム提供・バックアップ・リモートメンテナンスに加えて、ディーラーによる人力サポートが小規模企業のシステム化を推進していく上で必要な満足度の高いサポートシステムである
  4. 業種専用システムは、その業種に特化したシステムだが、本当にその機能が必要かどうか精査が必要
  5. 各項目での業務量がそれほど多くない小規模企業では、業種専用のまとまったパッケージシステムよりも業務単位で自社に効果が高いと思われる業務システムを選択した方がメリットを享受しやすい

これまで、6回にわたり“小規模企業の為の、長く使い続けられる販売管理システムの選び方”について、
【これだけは外せない!小規模企業に求められる販売管理要件10か条】を元に、小規模企業が販売管理システムを選択する際の注意点などについてお話させて頂きました。
何度もお話してきましたが、販売管理システムは皆様方の会社の財産を管理するシステムです。
そして、その販売管理システムから発せられる声ときちんと会話することで、自社の進むべき事業発展の進路を見出すことが可能になります。そういった意味では販売管理システムは皆様の会社の経営の羅針盤だと思います。
今回お話したことを是非ご参考になさって頂き、自社にとって最適な販売管理システムを採用して、皆様方の事業運営の一助として頂ければ幸いです。
最後まで長い間お付き合い頂き、誠に有難うございました。


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