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小規模企業の為の、長く使い続けられる販売管理システムの選び方【②これだけは外せない!小規模企業に求められる販売管理要件10か条の1と2】

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執筆者:ITコーディネータ (認定番号 0094392010C)
武内 靖志

前回は、販売管理システムは長く使い続けられるものを選定すべきだという事を、過去データの大切さを軸にお話しさせて頂きました。今回からはいよいよ“小規模企業にとって長く使えるシステムってどんなシステムだろうか?”という本題について私なりの経験に基づき、小規模企業の経営者の方にご留意頂きたい販売管理システムの選び方についてお話を始めさせて頂きます。

第一話 小規模企業の為の、長く使い続けられる販売管理システムの選び方②

結論からお話します。
小規模企業の経営者の方が販売管理を選定する場合、以下に掲げる
【これだけは外せない!小規模企業に求められる販売管理要件10か条】
を是非とも念頭に入れて頂きたいと思います。

【これだけは外せない!小規模企業に求められる販売管理要件10か条】

  1. 国の制度変更にきちんと対応できるシステム
  2. 社員全員が使えるシステム
  3. 小規模企業の特性に合ったシステム
  4. データの訂正などがいついかなる時でも容易に可能なシステム
  5. 自社のITリテラシー(IT機器やシステムを使いこなす力)に見合ったシステム
  6. 今、行っている販売系の事務作業について、できるだけ全てシステム化できる事
  7. 経営者の何故?に答えられるシステム
  8. 過去のデータ検索が自由にかつ有効に活用できるシステム
  9. メーカーとベンダーの連携がきちんとできていて、フォローが良いシステムである事
  10. 補足:自社の業態特有の処理ができるだけ簡単に処理できる事

上記の10か条は私の考える、最低限満たして欲しい必要条件です。
私は40年近く小規模企業の経営者の方と接触し、特に販売管理の有効活用について一緒に考えて参りました。
時代は日々変化し、テクノロジーは進歩し、以前は考えられなかった「あれば良いな~」という機能が実現できるシステムも出てきました。現時点で私の考える10か条について順を追って詳細に触れさせていただきたいと思います。
今回は、「1.国の制度変更にきちんと対応できるシステム」と、「2.社員全員が使えるシステム」についてお話したいと思います。

Chapter 1|10か条 1.国の制度変更にきちんと対応できるシステム

昭和の時代には、販売管理に係る制度変更はほとんど行われませんでした。制度変更がほとんどなかった時代ならそれほど意識せず、各個別企業が取引先との関わり合いの中で、個々に請求形態や管理の方法などを独自に決めていけばよかったのです。しかし、1989年(平成元年)から始まった消費税を機に、定期的にその仕組みは見直しがなされ、今年(2023年)10月からはインボイス制度というとてつもなく大きな制度変更が開始されようとしています。インボイス制度については、以前私が執筆したコラム“失敗しないインボイス対応”を参考にして頂ければ幸いです。
先ほどお話したように、昭和の時代には、自社独自の管理の仕方に合わせて独自のシステムをオリジナルで作ってもらうケースが多かったように思います。いわゆるオーダーメイドのシステムで、それを専門に行うシステムベンダーが大半でした。SE(システムエンジニア)と呼ばれる人が、企業経営者や担当者の方と打合せを行い、何をどう管理したいのか聞きながら、個別にオリジナルでシステムをプログラミングして納品していました。
当時はパッケージは既製服のようなもので、自社に合わないので使い物にならない、オリジナルシステムでないと用をなさないとまで言われていました。
今でも、昭和や平成の時代にオリジナルで作成してもらったシステムを、そのまま新しいコンピュータに焼き直して使い続けておられる小規模企業もあります。
しかし、時代は変わり、消費税開始、2000年問題、元号変更、軽減税率制度、インボイス制度、改正電子帳簿保存法、共通EDI……など、システムの根幹にかかわる大きな制度変更や税制変更などが当たり前のように実施されるようになりました。
そんな時代になるとオリジナルシステムは致命的な欠陥を露呈してしまいます。
A社、B社、C社がそれぞれオリジナルシステムを使っていた場合、フォローしているシステムベンダーは制度変更が発生する度にA社 B社 C社それぞれに別々にシステムで対応しなければなりません。
当然、個別対応ですから、コスト的にも高くなるし、それよりなにより制度スタートに間に合わない可能性があります。システム改修の費用とは、それに掛かった工数×時間単価ですから、仮に何百万もかけて何か月も待ってシステム改修したとしても、それに見合うシステムが納品されるとは限りません。多くの時間と多額のお金を費やしたからといって優れたシステムが出来上がるとは限らないのです。
またそのオリジナルシステムを構築した担当SEが退社していたら最悪の場合、そのシステムの改修は不可能という事もありえるのです。
従って、こういう制度変更が頻繁に起こる時代には、パッケージシステムを導入するのが必須です。
パッケージシステムの場合、そのメーカーは元のベースシステムを制度変更に合わせて改修すれば、導入顧客全てに対応が可能になりますので、費用的にも納期的にも、オリジナルシステムと比較して格段にリーズナブルなものになります。

【販売管理システムを住宅にたとえた例】

今のパッケージシステムは、以前と違って、パッケージのまま納品されるケースは少なく、アドオンカスタマイズといって、費用を掛ければ、ある程度、納入会社の要望に合わせて追加や変更をしてくれます。パッケージシステムの根幹にかかわるベース部分の変更はできませんが、それにアドオン(ソフトウェアへ新たな機能追加)により自社独自の要望にも応えてもらえるのです。
国策であるような制度変更に柔軟でスピーディにかつ安価に対応できるパッケージ+アドオンカスタマイズシステムは、現代の販売管理システムでは必須要件とお考え下さい。

Chapter 2|10か条 2.社員全員が使えるシステム

以前は、コンピュータを操作する担当者(主に事務の方)が決まっていて、営業の方などは手書きで仮伝票(入日記 ともいう)を起票し、それを担当者がシステムに入力するケースが大半でした。
しかし、その場合下図のように手書きの仮伝票とシステムに入力したデータが合致しているか照合しなければなりませんでした。

【パターンA】

手書きの仮伝票が得意先に商品と一緒に納品されています。得意先は納められた商品と手書きの仮伝票とチェックして受領サインをします。
しかし、得意先の受領サインをもらった仮伝票と、仮伝票からシステムに入力したデータと合致しているかどうかわかりません。もし間違っていたら、請求書を発行して送付した段階で得意先がチェックして初めて発見されます。 得意先に迷惑をかける訳にはいかないので、請求書を出す前にチェックリストを印刷して手書き伝票と照合します。
一方、下図のように、受注メモから直接各営業担当者がシステムに入力して、納品伝票を印刷し、システムから発行した納品書と商品を一緒に納品した場合、納品された商品と納品書の間違いチェックは現場に居合わせた得意先の購買担当者が行います。間違いがあればその場で、得意先がチェックしてくれるわけです。

【パターンB】

2つの図を比べて頂ければ一目瞭然です。パターンBの方がシンプルでモレやダブりのリスクが大幅に削減できています。最近では、パターンBの運用で営業全員がシステムに入力するケースが増えてきました。
事務担当者だけにシステム入力をお願いしていては納品時間に間に合わない事もあるからです。
     

例えば、営業担当者は早朝の5時に出社してその日納品する商品をピッキングして、6時に配達スタート、8時まで には得意先に届けなければならない……こういう場合を想定した時、事務担当者に入力を任せるのなら、同じく5時には出社して頂かねばなりません。また営業担当者の複数人が同じ時間帯に出社した場合、事務担当者一人では入力しきれない事も想定されます。
であれば、営業担当者自らが直接システムに入力して納品書発行を行うのが一番会社にとってはメリットが大きいといえるでしょう。
システムも以前に比べてかなり入力が簡単になりました。しかしそれでも受注入力や納品書作成は、いまだに事務担当者が行っている会社をよく見かけます。
システムは一人の専任の担当者だけが操作するもので、他のメンバーは関与しないと決めてしまっているようです。
そういう運用の仕方を行っていれば、いつまでたっても効率化も有効なITツールの利活用も困難だと言わざるを得ません。
頭から私には無理だ、うちの社員では無理だと決めつけずチャレンジしてみて下さい。

但し、一つだけ問題があります。
営業 全員が入力できるような簡単な操作方法が採用されているかどうか?です。
各システムメーカーやベンダーは口を揃えて、うちのシステムはカンタンです!と言います。
おそらくうちのシステムは操作が難しいと言うシステムは一つもないと言えるでしょう。
簡単かどうか判断するのは、メーカーでもベンダーでも小規模企業の経営者や担当事務員ではありません。
実際に売上データを入力する営業担当者です。人それぞれ簡単さ加減を判断できる基準が異なります。
ですから必ずお願いしたいのは、
事前にシステムをデモンストレーションで見る事です。
そして実際に操作してみる事です。
それも経営者、営業、事務担当者など社員全員で、見て、聞いて、触って欲しいと思います。
営業はシステム全てを操作するわけではありませんので、実際に営業に役割を果たして欲しいと思われる売上データ入力やその訂正の仕方などをデモンストレーションで見て判断して下さい。
その上で、みんなで使えるシステムを採用して、手書き伝票再入力方式を、販売管理システムから発行された伝票で納品するやり方(即伝発行システムともいう)にレベルアップして下さい。
きっと驚くほど世界が変わります。

Chapter 3|小規模企業の為の長く使い続けられる販売管理システムの選び方②のまとめ

  1. 制度変更のない時代にはオリジナルシステムの全盛期だった
  2. 頻繁に制度変更や税制変更のあるような時代にはオリジナルシステムでは対応できないケースもある
  3. 費用対効果を考えると、パッケージシステム+アドオンカスタマイズを適用するのが望ましい
  4. 少なくとも売上データの入力や訂正は営業全員で行なって、納品時に販売管理システムから発行された伝票を、商品と一緒に持って行った方がシステム利用効果が高い(即伝発行システムともいう)
  5. 営業全員が売上データ入力が可能かどうかデモンストレーションで判断する
  6. 簡単かどうか判断するのは、実際に操作を行う人の感性の問題である
  7. 納品時に販売管理システムで発行された伝票を持参する方式に変えると世界が一変する


いかがでしょうか?
今回は、国の制度変更にきちんと対応できるシステムとして、パッケージ+アドオンカスタマイズを選定すべきという点と、社員全員が使えるシステムを導入して即伝発行システムを採用した方が多くのシステム導入メリットを享受できるという点についてお話させて頂きました。

次回は【これだけは外せない!小規模企業に求められる販売管理要件10か条】の、
「3.小規模企業の特性に合ったシステム」と、
「4.データの訂正などがいついかなる時でも容易に可能なシステム」
についてお話させて頂きます。
どうぞご期待ください。

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