コラム
業務効率化や生産性向上など、中小企業のさまざまな課題解決に役立つ情報をお届けします。
  1. トップ
  2. コラム
  3. 小規模企業の為の、長く使い続けられる販売管理システムの選び方【①同じシステムを使い続ける事のメリット】

小規模企業の為の、長く使い続けられる販売管理システムの選び方【①同じシステムを使い続ける事のメリット】

イメージ画像

執筆者:ITコーディネータ (認定番号 0094392010C)
武内 靖志

激動の2022年がようやく終わり、2023年がスタートしました。

2022年はロシアによるウクライナ侵攻とそれに伴う食料品・原材料、特にエネルギー供給不足に伴う物価高騰、長引くコロナによる事業活動制限と消費行動抑制の長期化、更には中国でのゼロコロナ政策の方針転換に伴う不安定要素の長期化など、先行き不透明な状態で2023年の年初を迎える事となりました。世界情勢も消費者心理も以前と比較して大きく変化し、今後とも激動が続くと予想されています。経営者の方にお聞きすると、原材料高・物価高騰・コロナ禍による消費行動の抑制なども、早く収まって元のような世の中に戻って欲しいという声をよく耳にします。しかし、私は、ウクライナ情勢がどうなろうとも、コロナ感染症の状況がどうなろうとも、元の世の中には決して戻らないと思っています。
国民は、

●まさかと思っていた事が起こりうるという事
●不用意な他人との接触にはリスクがある事
●安全にはお金がかかる事
●自分の身は自分たちで守っていかなければならない事

に気づきました。

例えば、旅行を一つとっても、遠出が中心の旅行から近場でのマイクロツーリズムに移行したり、繁忙期や人の密集する場所を避けて、正月・GW・お盆集中依存型から脱却しつつあります。
また、通常のちょっとした買い物も現金を使わずキャッシュレス化が進展し、できるだけ現金を使わず、できれば非接触型の支払手段を希望するように変わりつつあります。
働き方も満員電車を利用してのオフィスワークから自宅や田舎でのリモートワークが増えてきています。
国民の消費行動の変化、就業環境の変化は、皆様方小規模企業の事業活動にも大きく影響を与えます。
これまでと同じように仕入れ、生産し、配送し、販売していたにもかかわらず、なぜかわからないが、販売量が減少したり売上がダウンする現象が出てきている所も多々あります。
「ロシアの為、コロナの為、時代が厳しくなった!」 そう嘆く経営者の方もたくさんいらっしゃいます。そんな経営者の方に私はいつも同じ事をお話ししています。
「世の中が厳しくなったのではありません。世の中が変化したのです。その変化に対応できていないから厳しくなったと感じているだけです。」
小規模企業と言えども、いえ、小規模企業だからこそ、
「世の中の変化に対応して事業戦略を構築していかねばならない」
私はそう考えています。
変化に対応して事業運営する時に、是非とも考えて頂きたいことを、色々と問題提起させて頂き、皆様方と一緒に考えて参りたいと思います。是非ともご参考になさって頂き、少しでも、皆様方の事業運営のお役に立てればと思っております。

第一話 小規模企業の為の、長く使い続けられる販売管理システムの選び方①

「小規模企業の事業戦略の話かと思ったら、いきなり販売管理だと~!」
そんな皆さんのお声が聞こえてきますが、まあそうおっしゃらずにお聞きください。
私は販売管理システムとは、単に請求書を発行したり、分かりきった売れ筋商品をリストアップしたりするツールだとは思っておりません。
販売管理システムは、皆様方の会社の財産を管理するシステムです。
そして、これぞ、皆様方の会社の強みと弱みをあぶり出し、次に打つべき手をアドバイスしてくれる羅針盤であると思っています。
販売管理システムを軽く見たり、販売管理システムから出て来るデータを軽視していては、持続的な事業発展はおぼつきません。まさに経営者は販売管理システムから聞こえてくる声と対話することなくして経営戦略を立てる事は不可能であるのです。
今回は、「小規模企業の為の、長く使い続けられる販売管理システムの選び方」をテーマに、どういうポイントで販売管理システムを選定すべきか?について、データ活用の仕方も含めてお話を進めて参りたいと思います。
最後までどうぞお付き合いください。

Chapter 1|過去データの重要性

先ほどもお話しましたが、販売管理システムは、会社の財産を管理するものであり、会社の栄枯盛衰に深く関わりあいを持つ重要なファクターです。
事業発展を後押ししてくれるような自社に合ったシステムを選ばねばなりません。当然、うまく利活用できないなら、当該システムからもっと良いシステムに買い替えねばならない事もあるでしょう。
さりとて、うまくいかないからといって、コロコロと何年かに一度他のメーカーのシステムに総入れ替えするのも如何なものかと私は思います。
できればずっと同じシステムを使い続けた方が良い。私はそう思っています。
他のメーカーのシステムに総入れ替えするというのは、顧問税理士を変えるくらい大きなリスクのあるものだとさえ私は思っています。同じシステムを使い続けた方が良い理由は以下の2つです。

① 慣れたシステムが使いやすい
② 違うシステムに買い替えると、データコンバージョンがうまくいかないケースがある

まず①については、お分かりと思いますが、長年慣れ親しんだ運用の方が操作に戸惑いが無くなるからです。今、手書きで処理されているのであれば、できるだけ手書きと同じようなやり方の方がスムースにシステム化が図れると思いますし、EXCELで処理されているのであれば、同じような使い方が出来る方が簡単に運用を始められます。
今の事務の流れを変えるのは相当の戸惑いが生まれるかもしれません。
しかし、慣れというのはそれほど重要なものではありません。人間は多少の違和感があっても、継続することによりすぐに習熟していく順応性を持っています。ですから、①についてはそれほど大きな問題ではありません。
慣れを重視して、運用を変えたくないからといって、役に立たないシステムを使い続けるのは本末転倒です。強烈な拒否感覚がないのであれば、よりメリットの多いシステムに買い替えても問題は少ないと思います。
重要なのは②のデータコンバージョンです。データコンバージョンとは、従来使っていた旧システムから今回新しく導入するシステムに、過去のデータを変換・移行(コンバート)することです。
AシステムからBシステムに移行する場合、得意先や商品の固定情報(マスター情報ともいう)のみ移行できるものから、過去の何年間もの取引情報(売上や仕入、在庫移動データなど)も移行できると謳っているものもあります。

しかし、表向き過去の取引データも全てデータコンバージョン可能と言っているものもありますが、注意すべきは全てのデータが以前使っていたシステムと同じように使えるわけではないという事です。
例えば、データ区分(伝票区分と言っているシステムもある)といって、データ単位で売上・仕入・在庫移動・入金・消費税……と区分けしたり、売上区分と言って売上・返品・値引……と区分けしている区分がシステム全体の思想の問題でうまく移行できないケースがあります。また、商品分類の考え方の違いから、かつての商品分類が使えず全て再設定必要なんてケースもあります。最終的に全て移行できたとしても、思わぬ時間と手間と費用が掛かってしまうという事は良く起こっている事です。
使い物にならなかったシステムの過去のデータなんて必要ないと思われるかもしれませんが、全く使っていなかったのならいざ知らず、一応売上や仕入のデータを入力し、使用していたシステムです。販売管理システム自体は使い物にならない代物だったかもしれませんが、苦労して入力したデータは貴重な会社の財産です。
過去のデータは会社の経営戦略にヒントを与えてくれる宝庫です。そこには宝の山が隠されているのです。

例えば、5年前はA商品がX商店に1月に〇〇個 △△円売れていた。今年の1月にはX商店にはB商品が最も売れていて、A商品は売れてはいるが減少傾向である。
たったこれだけの事実でもきちんとシステムと対話すれば貴重な情報が発見できることもあります。

●理由は何なのか?
●価格的な問題なのか
●商品の機能の問題か
●デザインの問題か
●この傾向はX商店だけの現象か?他の商店ではどうなのか?

ひょっとして、X商店にはA商品の代替品が他の業者から入っているかもしれません。他の業者にはB商品の代わりになるものがないから、今はB商品が売れているかもしれませんが、その業者がB商品の代替品を準備中でそれが提供可能になったら、B商品も代替品で置き換わってしまう危険信号かもしれません。
また他のY商店でも同じ傾向が見られた場合、A商品そのもののニーズが時代の変化と共に合わなくなってしまっている事も想定されます。その傾向が全域的なのか、特定地域限定の動きなのか?……
突き詰めていけば必ず要因は発見できます。
小さな変化は大きな激変の予兆です。早めに手を打てば、大きな火傷を負わずにリスクを避ける事が可能になります。だから、過去のデータはとても貴重なのです。未来の行く末を指し示す羅針盤なのです。
過去のデータを粗末に扱うと、必ず大きなしっぺ返しを食う。私はそう思っています。

最近、AI(人工知能)がもてはやされていますが、AIの基本的な思想は、極論を言えば過去の膨大なデータの集積を元にした確率的に高いものを選択しているだけです。(もちろんそれだけではありませんが……)
人間の知能をコンピュータにやらせようとして、思考回路そのものをシステム化しようとしたがうまくいかず、その代わりあらゆる膨大な該当データを蓄積させ、それらを時系列的に処理することで、どうなったかを見て、過去データを分析する事によって最善と思われる方法を選択させている。簡単に言うとそれがAIの基本的な思想です。
特に小規模企業の場合、大企業に比べて商品点数も取引先件数も山ほどあるわけではないので、AIなんか使わなくても、きちんとシステムでデータを蓄積して、経営者が的を得た分析をすれば、より効果的な経営戦略に生かす事が可能になるのです。

Chapter 2|これからのKKD

こういった話をした場合、経営者の中には
「うちは商品や取引先などが少ないのでシステムで管理するほどではない」
「全部、経営者の私の頭に入っている」
という声をよく聞きますが、そういう経営者はKKD(勘と経験と度胸)で充分だ思っているケースが多いようです。
長年同じ経営を続けていると、どんな優れた人間でも必ず“慣性”による思考の習慣化が現れるものです。
どんなに優秀な経営者でも、経験を積めば積むほど増えるものは2つあるそうです。

① 過去の成功体験から多分私の経験に基づいた考えが一番正しいと思う思い込み
② 間違った判断をした場合の、自分を擁護するもっともらしい言い訳

KKD(勘と経験と度胸)に頼った経営は、変化の乏しい時代では通用することもあります。
しかしながら、冒頭申し上げたような、

●何が起きても不思議ではない時代
●顧客(消費者)の思想・行動が劇的に変化している時代

ではこういった経営方針ではいつ暗礁に乗り上げても不思議ではありません。
今のKKDは勘と経験と度胸ではありません。K:仮説とK:検証とD:データを重視する経営が求められるのです。

だから長く使えるシステムを選定してきちんと使いこなすとともに、過去の何年もの間の蓄積された貴重な販売管理データを活用して、データに基づいた仮説を立て、それを検証し、再度データを収集して、分析、その結果を見て再度仮説、検証を繰り返していくというPDCAサイクル(Plan_計画・Do_実行・Check_評価・Action_改善)を回す事が大切なのです。
しかし、使えないシステムをいつまでも使い続けて下さいという事ではありません。
買い替えるのなら、きちんと次章以降に述べる事を参考にしながら、最小回数の入れ替えに留めて頂きたいのです。一度システム選定に失敗したら、二度と選定に失敗しないようにして頂きたいと思います。
まずは、現在お使いの販売管理システムを精査して頂き、次章以降に述べる選定POINTに合致しないようであれば、早めに他のシステムへの買い替えをお勧めします。
そして今度こそ、選んだシステムを長く使い続けて、システム入れ替えに伴うデータコンバージョンなどの無駄?な手間と費用を掛けなくても良いようにするとともに、蓄積されたデータを有効活用して、自社の事業運営に効果的に活用頂きたいと思います。

Chapter 3|小規模企業の為の長く使い続けられる販売管理システムの選び方①のまとめ

  1. 2022年に起こった激動の変化が終息しても、元の世の中には決して戻らない
  2. 世の中が厳しくなったのではなく、変化した世の中に対応できていないから厳しくなったと感じるだけである
  3. 販売管理システムは、会社の財産を管理するとても大切なシステムである
  4. 他メーカーのシステムに入れ替えると、せっかく蓄積した過去の取引データがコンバートできないリスクがある
  5. 販売管理システムから発せられる過去データに基づいた声と対話すれば見えなかったものが見えてくる
  6. これからのKKD経営はK:仮説とK:検証とD:データを重視する経営である
  7. システムベンダーを変えてシステムを入れ替えるなら、二度と失敗しないよう、自社にとってどういうシステムがマッチしているかPOINTを絞って精査していく事が大切


いかがでしょうか?
今回は、販売管理システムは長く使い続けられるものを選定すべきだという事を、過去データの大切さを軸にお話しさせて頂きました。次回以降はいよいよ“小規模企業にとって長く使えるシステムってどんなシステムだろうか?”という本題についてお話を始めさせて頂きます。
小規模企業には小規模企業独自の特異性があります。従業員100名以上の中規模企業に求められるシステムと小規模企業に求められるシステムは同じではありません。
小規模企業ならではの特性・独自性に注目しつつ、今の激動の経済情勢の中で求められる販売管理システムの必要条件についてお話させて頂きます。
どうぞご期待ください。

楽一について詳しくはコチラ ご相談・お問い合わせはコチラ
ページトップへ